千葉さんは、『へら絞り』と呼ばれる技法で金属加工をされています。『へら絞り』とは、金属の伸びる性質を利用し、板状の素材となる金属板を回転させ、ローラーやへらと呼ばれる専用工具を押しあてて、金属板を成形していく加工方法です。回転させる軸にはあらかじめ、型と呼ばれる木型が固定されていて、この型に沿うように、へらを使って金属板の回転中心部から外側へ向かって少しずつ成形していきます。部分的な変形を繰返し与えながら徐々に形にしていく様子は、陶芸のろくろ作りに似ています。ステンレスのように硬く加工が難しい材質であっても、へらに伝わる感触で素材の変形状態を確認し、金属の反応を見極めながら、微妙な力加減で均一の厚みにしていきます。およそ45年という長年の経験と、創意工夫によって精度の高い加工を加えられた製品には、家紋や橋の欄干などに飾りとして付ける擬宝珠(ギボシ)、神社の鈴など多岐にわたります。「どんな注文がきてもチャレンジ。挑戦していきたい」と笑顔でおっしゃる千葉さん。難しいと思った仕事でも引受け、必ず解決策を見つけ出すという熱い職人魂を感じました。