清水さんは、鍛治職人としておよそ60年間刃物製作をされています。特にはさみの製作では『総手打ち造り』と呼ばれる技術を継承されている唯一の職人です。『総手打ち造り』とは、一本の鉄から金槌と炎だけで造りだす製法で、機械や型などは一切使用しません。特殊極軟鋼とよばれる棒状の鉄を800度以上の高温で叩き出し、全ての工程を手打ちのみで行います。「頭の中に型ができていて、体がすべて覚えているから打つことができる」とおっしゃる清水さん。長年の経験と勘だけで徐々に形にしていきます。目に見えない細部にまでこだわり、神経を注ぎ込んで完成されたはさみは、刃がスースーと滑るような感触です。清水さんの熟練された技術は、一流テーラーや縫製工場からも高い信頼を得ており、長年にわたり優れた特注品を納めてきました。鍛治の伝統技法を受け継ぎ、常に使い手の使いやすさにこだわり続ける清水さん。職人としての誇りと温かい人柄を感じました。