学校の理科実験から最先端科学研究まで、化学実験に「理化学ガラス器具」は必需品。桐山さんはおよそ60年、理化学ガラス器具の開発・製造を続け、精密な加工技術で日本の科学の発展を、縁の下から支えてきました。代表作は、化学実験の場で広く使用されている、吸引ろ過用の「桐山ロート」。ろ過作業は実験において日常茶飯事に行われるものの、それまでのロートは主に多数の穴から溶液を通すしくみで、目づまりしやすいなど難点の多いものでした。その解決に取り組んでいた桐山さんに、きっかけとなったのは”マンホールの蓋”。蓋にある無数の溝から雨水が落ちていく姿をヒントに、多数の穴の変わりに底面に溶液を導く溝が刻まれた「桐山ロート」は操作性が高く、大量の溶液を素早くろ過できる画期的な商品となりました。桐山製作所では、桐山ロートをはじめ数万点にものぼるカタログ商品だけではなくご注文に応じて新たな器具も考え出しています。桐山さんは「荒川区には荒川マイスターだけではなく世間に広く知られていない腕利きの職人がたくさんいます。たくさんの職人に活躍の場が増えて、荒川区の活性化につなげたい」と、地元への深い愛情も語られていらっしゃいました。