江戸衣装着人形の伝統に基づき、雛人形・五月人形を製作しつづけていらっしゃる竹中重男さん、奥様の温恵さん。重男さんは、明治時代から続く老舗の３代目で経済産業大臣指定伝統工芸士、荒川区指定無形文化財でもいらっしゃいます。衣裳着人形とは、衣裳を作り、胴体に衣裳を着せつけ、手足に動きをつけて完成させていく伝統工芸で、約150もの工程を一つ一つ手作業で仕上げていきます。特に人形師の技が光るのは、「振り付け」という工程。「振り付け」とは、完成した姿をイメージしながら、腕など曲げる部分に目打ちを当てて、手足の動きを仕上げる作業のことをいいます。袖に自然な折り目が施され、みるみるうちに、人形にそっと魂がふきこまれていくのです。竹中さんの作品は、完成したときの柄の見え方、袖の色のグラデーションだけでなく見えないところにも仕上がりを見越した一手間をかけ、随所にこだわりが光ります。最近では形見の帯を持ち込んで、人形として記念に残すお客様もいらっしゃるそうです。