郷土愛の醸成が
埼玉の未来を創り出す

本記事は20周年企画の一環として、大宮地域で活躍するさまざまな方々に、あらためて大宮という街の魅力や目指したい未来についてお聞きするインタビューシリーズです。取材を受けられた人に、次の人をご紹介いただくというルールのもと、プレイヤーからプレイヤーへとバトンをつないでいきます。

9人目は、株式会社ノースコーポレーション代表の北康信さんです。北さんは埼玉県内で複数のイタリア料理店を展開するほか、日本ソムリエ協会理事や「さいたまヨーロッパ野菜研究会」の会長も務められています。そんな北さんに埼玉県内での活動や大宮の魅力を伺いました。

お話しを聞いた人

お名前

北康信さん

1972年生まれ、埼玉県出身。1995年大学在学中に起業し1997年にさいたま市浦和区に1号店を開店する。「食を通じて地域を創る」をスローガンに埼玉県内に8店舗を経営する。 イタリア料理から学んだ地産地消の文化を埼玉に根付かせ、郷土愛を醸成する活動を精力的に行っている。
さいたまヨーロッパ野菜研究会会長/一般社団法人日本ソムリ協会理事/一般社団法人埼玉県物産観光協会副会長/シェフクラブSAITMA事務局長

次の世代にバトンタッチできる環境を

さいたまヨーロッパ野菜研究会は北さんが発足したと伺いました。

はい。きっかけは2009年にトキタ種苗さん(さいたま市)が、日本の気候でも栽培できるイタリア料理に欠かせないヨーロッパ野菜の種を開発したという新聞記事を目にしたことでした。当時、私どものレストランで使用するイタリア野菜は輸入に頼るとコストや鮮度の面で問題があり、そこにこの朗報が飛び込んできたものですから「これはぜひ使いたい!」と、すぐにトキタ種苗さんに連絡を取りました。

その後、ヨーロッパ野菜を栽培していただける生産者のみなさんと連携して、2013年に「さいたまヨーロッパ野菜研究会」を結成しました。現在はさいたま市内の若手農家とシェフが協力して年間約80種類のヨーロッパ野菜を栽培し、県内の約1200店のレストランで使われています。また、これら生産の拠点となる岩槻区にヨーロッパ野菜をメインとした本格的なカフェレストラン「ヨロ研カフェ」を2020年にオープンしました。

さいたまヨーロッパ野菜研究会 生産者のみなさん

ヨーロッパ野菜

ヨーロッパ野菜を通じて学校給食の取り組みもされているそうですね。

はい。2013年からさいたま市内の小中学校でヨーロッパ野菜を使ったイタリアン給食を提供しています。また2021年からは市の教育委員会と連携協定を結び、「食べるから育てるへ」というテーマで、生徒が学校農園でヨーロッパ野菜を栽培し、それらが育つと学校給食として食べるという試みも始めました。このような取り組みが広がると、例えば将来生徒のみなさんが県外の高校や大学に進学した際に、ふと給食の話題になり「ヨーロッパ野菜を使った給食?」「それっておしゃれだね」「おいしそう!」とまわりから羨ましがられ、それを言われた本人は地元がより誇らしく思える。そういった郷土愛を醸成する役割としてもヨーロッパ野菜を活用していきたいと考えています。

結果、埼玉の魅力を他県に伝える効果にも繋がりますよね。

そうなんです。ほかにも、イタリアン給食ではシェフと一緒にヨーロッパ野菜の生産者も学校を訪れるのですが、そこに通う生産者のお子さんがキラキラと輝く父親の姿を見て、「自分も将来は農業を継ぎたい!」と宣言したこともあったそうです。今、農業はさまざまな理由から担い手不足が叫ばれている時代ですが、そのような前向きな状況を生み出すことで次の世代にバトンタッチできることが理想ですし、新たな世代がこの地域を創っていくことにおいても大切な取り組みだと思います。

大宮はたくさんのワクワクが詰まっている街

北さんは浦和のご出身ですが、大宮の街やエキュート大宮はよく訪れますか?

はい。高校時代は映画を観に行くとかカラオケに行くとか、大宮は遊びに行く場所でしたし、そういえば体育祭の打ち上げもやりましたね。大宮ってたくさんのワクワクが詰まっている街で、どんどん人が集まってくるイメージがあるんです。エキュート大宮もよく利用させていただいていますが、広い駅構内にたくさんのお店が所狭しと並んでいるので、毎回ウィンドウショッピングをしているような面白さがありますね。

最後に、北さんが思い描く埼玉県の未来を教えてください。

これまでの埼玉県は観光分野ではあまり注目をされていなかったと思うんです。私は埼玉県物産観光協会の副会長としても活動していまして、あらためて埼玉にはたくさんの素晴らしい物産品や観光スポットがあると実感しています。今後はそれをもとに、さらに埼玉県の魅力を発信していきたいですね。きっとその取り組みが地元の魅力を再認識するきっかけにもなりますし、その郷土愛が県外に広がれば他県からの注目も増して、ひいてはインバウンドにも繋がっていく。そうやってさまざまな方に地元の魅力が波及していけば、埼玉県がさらに盛り上がり、豊かでワクワクする場所になっていくと思います。

北さん、ありがとうございました。
では、次にインタビューする方のご指名をお願いします。

株式会社コミュニティコム代表の星野邦敏さんです。星野さんは大宮でコワーキングスペースを運営されているほか、大宮経済新聞の編集長も務められています。また、昨年5月にオープンした川越の商業施設「りそな コエドテラス」ではシェアキッチンを運営されていて、同施設に私どものレストランも入っているという縁で星野さんとは仲良くさせていただいております。星野さんは大宮の街を知り尽くすほどの“情報通”ですので、ぜひ私が知らない大宮の魅力を伺ってみてください。