「食」を通して誰もが
笑顔になれる社会に

本記事は20周年企画の一環として、大宮地域で活躍するさまざまな方々に、あらためて大宮という街の魅力や目指したい未来についてお聞きするインタビューシリーズです。取材を受けられた人に、次の人をご紹介いただくというルールのもと、プレイヤーからプレイヤーへとバトンをつないでいきます。

6人目は、パレスホテル大宮の総料理長、毛塚智之さんです。大宮のランドマーク的存在の一つでもあるこのホテルで、味わいを極めた数々の逸品を提供し続ける毛塚さんに、大宮の印象や料理で繋がる取り組みについて伺いました。

お話しを聞いた人

お名前

毛塚智之さん

1968年栃木県栃木市生まれ。情熱と熱意、そして料理の原点である母親の味を常に信念に持ち、ホテルのみならず、リュクスダイ二ングシェフ(出張シェフ)で、お客様の自宅で高級フランス料理を提供すると共に、次世代の子供達の食育セミナー、講演等に積極的に取り組む。また、青年司厨士の育成にも力を注ぎ、現在一般社団法人全日本司厨士協会国内審査委員を務める。2012年には栃木県の食の親善大使として、栃木県未来大使に任命される。また、2014年には、彩の国優秀技能者「埼玉の名工」を西洋料理界より埼玉県で初めて受賞する。
2020年第25回ドイツ世界料理オリンピック日本代表ナショナルチームチームリーダーに就任。
2024年度秋の叙勲・褒章「黄綬褒章」受章
座右の銘は「食は楽しいが原点であり想いと言う最高のスパイスと共に」

「大宮に恩返しを」 その声で始まった福祉施設での活動

毛塚さんは1988年の開業を機にパレスホテル大宮に配属になったそうですね。

はい。高校卒業後に東京・九段下の「ホテルグランドパレス(2021年に閉館)」の門を叩き、「パレスホテル東京」を経て、このホテルで働くことになりました。当時、大宮駅西口で大きな建物というとソニックシティビルやそごう大宮店くらいでしたが、そこから駅周辺がどんどん開発されいって……あれから36年が経つんですね。今は総料理長として、このホテルの直営7店舗のレストランの統括をしています。普段の仕事はメニュー開発はもとより、人材の確保や育成など多岐に渡りますね。

他にも福祉施設での菓子作りの指導をはじめ様々な社会活動も行われています。

そういった取り組みの始まりは、ホテルが20周年を向かえる時にスタッフから「大宮に恩返しがしたい」と声が上がったことでした。県の福祉部に相談すると県内の児童養護施設への慰問を提案され、その施設の子どもたちと一緒に料理を作り親睦を深めました。その後、県の職員さんから「授産施設*で作るクッキーが売れない。売れてもお情け程度」と相談を受けたんです。

そこで既存のメニューを改善し、ホテルやデパートと同等に安心でクオリティーの高い商品を提供することで、しっかりとした対価を生み出そうと考えました。結果、売上も大きく伸び、今ではこのホテルでも定期的に販売しているんです。また、施設で働く方々のやる気や誇りに繋がればとの思いから、県内の授産施設による焼き菓子コンクールも開催しています。

授産施設*…心身上の理由や世帯の事情により一般就労や十分な収入の確保が難しい人に、就労や技能習得の機会を与え、自立をサポートする施設。

他にも小中学校での「シェフ給食」など子どもたちへの食育セミナーも行われています。

「シェフ給食」は、学校の栄養教諭さんと一緒に考案した給食メニューを我々ホテルのメンバーと子どもたちとで一緒に作り、それをみんなで食べるという取り組みです。笑顔で給食を口に運ぶ姿を見ると、たまらなくうれしくなるんですよね。

私には「食は楽しいが原点であり、想いと言う最高のスパイスと共に」という座右の銘があるのですが、どんな雰囲気で誰と食べるかってものすごく重要なんです。同じ料理でも気の知れたメンバーでワイワイ食べる時と、仏頂面で一人で食べる時とではおいしさが全く変わってきますよね。子どもたちには、その「食は楽しい」という経験をこういった取り組みを通して感じてほしいですね。

毛塚さん座右の銘「食は楽しいが原点であり想いと言う最高のスパイスと共に」 文字・挿絵はアロハ太朗さん

エキュートは常に新しいものを発信する場所

この度20周年を迎えたエキュートですが、大宮店はよく利用されますか?

はい、お弁当や贈答品の購入でよく利用します。駅を使う際に気軽に立ち寄れる場所があるって本当に便利ですよね。いろんなジャンルの商品がワンフロアで見られるのもエキュートの大きな魅力ですし、時代時代にあった新しいものを発信されているので常に気になる存在でもあります。今後も新たな発信をし続けていただいて、さらに大宮を元気にしていただきたいです。

最後に、これからの大宮の街に期待することを教えてください。

このホテルで働き始めた頃はまだまだ発展途上の街だったのに、それが嘘のように今はすごく大きな街になりましたよね。その一方で、さいたま市の統計によると今後少しずつ人口が減少するという報告もありますが、そういった中でも子どもからお年寄りもまで住みやすく、人と人が温かく繋がる街でいてほしいですね。大宮の人はとても人懐っこいというか、顔で繋がるような人のぬくもりがある街だと感じているので、パレスホテル大宮のレストランにご来店いただいたお客様とも、食を通じて心と心が通う場所でありたいと思っています。

毛塚さん、ありがとうございました。
では、次にインタビューする方のご指名をお願いします。

大宮の「国際クッキングスクール」の校長・内堀恵子さんを紹介します。内堀さんは料理教室はもとより、地場産の素材を使ったレシピの開発やフードコーディネーター、ご著書の出版など食を通してマルチにご活躍されています。テレビ埼玉の料理番組でご一緒させていただいたり、私どものホテルの商品開発に携わっていただいたり、先ほどの焼き菓子コンクールでは、(前回登場した)アロハ太朗さんに司会をしてもらい、内堀さんには審査員をお願いしているんです。ぜひ内堀さんには大宮の食の面白さについて聞いてみてほしいですね。